シンポジウム「新球団に期待する」

【日時】 平成16年10月18日(月)18時半〜20時半
【場所】 仙台市青葉区青葉山、仙台国際センター大ホール

【パネリスト】 
衣笠祥雄氏(野球解説者)
浅野史郎氏(宮城県知事)
竹内健二氏(東北のプロ野球を応援する市民の会・宮城 代表)
西村欣也氏(朝日新聞編集委員)
【コーディネーター】 長田渚左氏(ノンフィクション作家)

5人のパネリストを招いて開かれた「新球団に期待する」シンポジウム


以下の記録はプロ野球新球団が仙台に誕生する機運が高まった、平成16年10月
行われたシンポジウムの抜粋です。
まだ、設立球団も決まっていなかった時でしたが、プロ野球選手会のストを経て
これからプロ野球はどのように変わっていくべきか、プロ野球ファンの声をどのように
反映するべきかが、熱く語り合われました。

そして、何かしらの改革が行われるのではないかという夢と期待に満ちあふれていた
時期のシンポでもありました。
平成17年新球団が設立、その年の球団成績は屈辱的な負け数を記録しました。
その後に起きた監督解任。誰もが何らかの改革に期待していたのに、それが全くの
夢物語であったことを目にした一年でした。


 シンポジウム内容抜粋


今年プロ野球のストが起きたが、一連の騒動のなかで感じにことは?

西村 キ−ワ−ドは「たかが・・・ されど・・・」
されど・されどと言い続けて4ヶ月が経つ。
6月13日に近鉄とオリックスの合併が明らかになり、7月7日のオ−ナ−会議を経て、
8日に某球団の前オ−ナ−だった方が「たかが、選手が」とおっしゃった。
この「たかが」が選手だけでなく、ファンが、地方が、つまり世論が、何か変だという方に向いてきた。
そして、その世論が大きな渦となって巻き返した。
当初、わたしは巻き返さないと思っていた。
長年、渡辺さんという方と戦ってきて「おかしいよ、おかしいよ」と言い続けてきたのだが、
勝ったためしはなかったからだ。
ところが、今回は一人一人が声を挙げた結果、小さな波が大きなうねりになり、世論を省み
ない、そして、世論が何かすら判らない人たちを包囲した、そういう4ヶ月だったと思う。
衣笠 一連の騒動を見るに付け一番の思いは「悲しい」というキ−ワ−ドである。
プロ野球の商品は試合を行うことだと思う。その試合でこれから頑張らなければならないという
6月に合併という話しが出て、自分たちの商品にキズをつけてしまった。
そして、試合よりも騒動の方が表に出てきたことがなによりも悲しいという思いである。
経営陣というのは、球団をもっとよい会社にしようする人たちだと思っていただけに、
何か裏切られたような思いであった。  

地元に球団ができるということはどういうことなのか、市民球団出身の衣笠さんにお聞きしたい。

衣笠 地元に球団が出来るということはまず、話題性が増えることである。
毎日の会話の中でも地元野球の話が話題になることが多くなる。
私は昭和40年 球団創立16年目の年に広島カ−プに入団したが、創立当時の話しを聞く
と、まずは毎日の生活に楽しみが持てたという声が一番だった。

カ−プも出来た当時は球団としても弱くて、負けるだけのチ−ムであったがそれでも、
「おらが町のチ−ム」が出来たという喜びで、それまでは阪神にファンだった広島市民が
徐々にカ−プファンになり、自分たちが育てていくのだという実感が出てきた。
純然たる市民の球団というのは広島しかないという特殊性もあったが・・・・。

次には子供たちが明るくなったこと。地元に球団ができると子供が選手の練習している姿や試合
に接する機会が多く、その結果非常に明るくなったといわれた。
子供同士の話題の中なかに「カ−プ」という共通の話が広がって、友達が増えていくということ
もあったろうが、実際に選手を目の当たりにすることで、自分も頑張ったらあのようになれるかな、
という夢を抱くことが出来ることが何より大きかったといわれている。

今回の騒動で広島県民は再び危機感を持った。広島カ−プというのが自分たちにとって
どういう存在であるのか、それが広島市でデモという形になった。
広島にあるチ−ムの意義がどういうものであるかを世間にアピ−ルしたと思う。

広島東洋カ−プで東洋の名前が表面に出てこないわけ

衣笠 現在の名称になったのが、昭和43年である。それまではマツダの前進である東洋工業の
下請け7社が面倒を見ていたが、金が必要となってきて銀行から融資が必要となったとき
に裏書きしてくれる会社が必要となり、そこで東洋工業が引き受けてくれた。
当時のオ−ナ−は市民球団を守るために企業名を入れることに消極的であったが銀行側
の強い要望でそうなった経緯がある。

70年のプロ野球の歴史の中で色々の問題が吹き出した年であるが、その内容について

西村 今年の初めから振り返ると、最初は近鉄の名前をどこかに売るという話しが出発点で
あった。
この話はコミッショナ−がだめだと言い、渡辺前オ−ナ−がだめだと言って潰れた。
当初この問題は、野球場のネ−ミングライツなどとは異なり、球団名の名前と実体が
離れるということであり、潰れたこと自体それほど大問題とは思わなかった。
ところがそのときに球界縮小再編成の流れは始まっていた。

それが7月7日のオ−ナ−会議で堤オ−ナ−(当時)が「もう一つの合併が進んでいる。
ついては10球団になったら1リ−グで」と発言して、それを渡辺前オ−ナ−も援護した。
その翌日に酔っぱらって「たかが、選手」発言が飛び出した。
7月10日選手会はストライキ権確立の協議をした。12日に98%の賛成でスト権を確立
した。それでも9月3日に渡辺前オ−ナ−は「巨人はパリ−グに移ってもいいのだ」という
発言をした。
その後、こじれにこじて9月18,19日にストライキに入った。

そのなかで、6月30日にライブドアが近鉄を買ってもいいよと手を挙げていた。
このことが非常に大きかった。
「買うという企業があるのに何故減らすのか 」
これが大きなパワ−になった。

新規参入ということに関しては楽天が9月13日に手を挙げるのだが、後出しだとかライブ
ドア潰しだとは言いたくないが、ここを境に流れは変わっていった。
ストが打たれたが、新規参入は認めるというふうにオ−ナ−側は変わっていった。

両社とも仙台を本拠地すると言っているが、どちらが来ても仙台がプロ野球を変えていく
のだということになると考える。
日本シリ−ズの途中で帰るようなコミッショナ−、ファンのことを何も考えないオ−ナ−達
が好きなことをやっていては、「ファンはもう黙っていませんよ」といえるようななった
一年だったと思う。

これからは仙台のファンが見守っていって改革について声もあげ、新規参入した経営者が
これまでの経営者にものを言えるようになっていけばよいなと思っている。

プロ野球球団が地方にないことについて

衣笠 東北の要である仙台に無かったことが不思議である。今年札幌に出来て、あとは四国に
ないのが不思議だと思う。

地方に球団が移るということは、それだけ子供が生の試合を見るチャンスが増えるという
ことだ。
野球ファンを増やすにはこれしか方法がないのだ、ということをどうして経営者が判らない
のか、それが不思議で仕方がない。
球団が移るのという冒険をするのが怖いのかなと思う。

いつも話すのだが、球団を移して定着するまで10年かかる。
小学6年生の子供が大学出るまで10年。
小学生の時にインプットされたものが大人になってファンとなるまでに10年が必要となる。

プロ野球について、未来・将来についての考え

西村 「改革」
今回のスト収拾のときに「プロ野球構造改革協議会」の設置を選手会との間で覚書として取り交
わした。
これは是非やってほしい。

今、東京ではライブドアと楽天をどうする・こうするとヒアリングというのをやっているけど、
公開とはいえないものだ。
やっと公共的文化財という言葉を口にしたなと思ったら「アダルトサイト」だから。
これまで、公共的文化財の側面をほったらかしにして、野球というのは経営と文化の両方の
上に成り立っているのに、経営の話だけをしてきた。
いまでもそういう意味では(オ−ナ−連中はプロ野球が危機的状態にあるということを)あまり
思い知っていないと思う。
だからこそ、このような会を開きファンが集まり、声をあげていくのが大事なのだ。

楽天かライブドアを決めるにあたって、どうしてファンの声が反映されないのかわからない。
ヒアリングの委員にも偏りがあるし、ズ−ットしゃべっているのも、巨人代表でほかの人は
ほとんどしゃべらないし。
巨人の代表がまた「ライブドアいじめているなあ」って思われてもしょうがないヒアリングなる
ものがいまだに続いている。

だから、本当にこういう公開の場で、ファンの声も取り入れてやればいいのだが・・・・。
できない、何かがあるであろう。
衣笠 「喜び」
野球を語りにたくさんの人が集まってきた。今までの「勝った負けた」だけでなくて、
「野球って誰のものだ」とファンが初めて声を挙げた。

野球は誰のものだと考えた場合に、一人は企業のものというかもしれない。一人は選手
がいなければできないのだから選手のものだろうという人もいるであろう。
ファンがいなければお前たちどうやって商売するのだいう声が、初めて表に出てきた。
すなわち、今回は三つのところから同時に声があがった。
そして今回に限って言えば、選手の声とファンの声がくっついた。
だから、企業のやってきたこと、やろうとしたことの目論見が外れた。
   
改革について、今が始まりであり、いろいろの試みの末にそれが、やがては喜びに変わる
であろう。
30年先、50年先のプロ野球はもっとよくなるはずだから。
ファンの人がプロ野球はどうあるべきかを本当に考えてくれたのがうれしい。

新規参入球団は楽天にほぼ決まっているようだが、ライブドアにはどのように断るのだろう

西村 ライブドアの断り方が見ものだというが、私もそう思う。

コミッショナ−には今後何を望むか

西村 わたしはコミッショナ−に何か期待するのはやめた。
ストの時に辞めると言ったので、そのまま辞めるのかと思ったら、後任がいないとか、
有識者会議を立ち上げてからと言っているけど、有識者がしり込みしてメンバ−が
集まらない。
でも、何とかして辞めてもらわないと困るのだが。

コミッショナ−は自分から辞めるといわない限り、今の野球協約では任期が来るまで、
辞めさせることはできない。
だから、今のコミショナ−にお引取り願うには再度皆さんが声をあげて世論を喚起
することが必要である。  

野球機構に野球経験者がいないのはおかしいのではないか

西村 今入っていないのがおかしい。少なくとも野球に愛情を持っていらっしゃる方に
入ってほしい。
衣笠 今まではジャーナリスト関係の方がコミッショナ−やリーグ代表をしており、球界の人間
が入るという気運はなかった。
選手とオフィスは別物という考えで進んできたのかもしれない。
はがゆい面もあるので、現場の考え方・ファンの求めているものを取り入れられるのなら、
チャンスが与えられればやってみたいと思う選手は多いのではないか。

野球解説者の中には球団は地元のサッカ−の上前をはねろみたいな話もあるが

衣笠 アメリカには4大スポ−ツがあり、大都市ほど多くのスポ−ツを持っている。
仙台は野球とサッカ−の両方のプロチ−ムを持っているという誇りをもてば、共存できるので
はないか。
両方とも開催時期が重なるという問題はあるが、片方が片方を食い物にするなんていうこと
はとんでもない考え方だと思う。

今回のストには選手の反省も必要でないか。選手の高年俸に対して庶民が嫌気を感じている

衣笠 選手の弁明ではないが、今回のストはファンが後ろから押してくれて、突入したという側面もある。
今度のストは年俸闘争ではなく、話合いの場を持ってほしいという要求を経営側が蹴ったこと
が原因であり、選手は誰もストをやることが本意ではなかったはずだ。
せざるを得ない状況に経営側が追い込んだ。「窮鼠猫を噛む」の状態に選手をしてしまった
と考えている。

820人の選手のなかで1億円以上の年俸選手が74人いる。一握りの選手だけが高給取り
であり、今年10年目で首位打者となった嶋選手も年俸700万円である。
そういう選手が大半であるということを理解してほしい。

改革はまだ始まっていない。これから選手会も球団も血を流さなければならないという
可能性を含んでいる。でも、これからプロ野球は新しい方向に進もうとしていることも
わかってほしい。

最後に2005年プロ野球改革元年でプロ野球が変わったかどうか、参考資料で評価してみてください